誰もが一度は目にしたことがあり、昔から日本人の暮らしに深く馴染んできたお寺と神社ですが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?
結論から言うと、見た目の違いはもちろんですがお寺と神社は宗派や祀っているもの、勤めている人やお参りの方法に違いがあります。
この記事ではお寺と神社の具体的な違いや双方の関係性、お寺と神社の数はどっちが多いのか、お参りする際はどっちへ先に行くべきかなどを分かりやすく解説していきます。
目次
お寺と神社の具体的な見た目の違いを分かりやすく解説!
お寺と神社は見た目や雰囲気が似ているけれど、はっきりとした違いってあるの?と感じている方も多いと思います。
お寺や神社はお祭りや行事が開催される場所でなく、古く昔から現在に至るまでお参りする文化が根強く残っているため、私たち日本人にとって身近な存在です。
では、お寺と神社の見た目の違いは何なのか?そんな疑問を持つ方の為に、具体的な違いについて分かりやすく解説していきます。
お寺と神社には見た目に明確な違いがある
お寺と神社は私たちに馴染み深いものの、違いについてはっきりとした説明をするのは難しいという方も多いでしょう。
実はお寺と神社は見た目に明確な違いがあり、違いの1つとして挙げられるのはお参りする際に私たちはお寺に祀られている仏像を多くの場合目にすることができますが、神社は祀られている御神体を一般的に見られないことです。
お寺は仏の姿を形にした仏像を目にして拝めますが、神社に祀られている御神体は非常に神聖なものとして神社の奥に安置されているので、通常人の目に触れることはありません。
お寺と神社の見た目の違い:お寺や仏教建築の特徴
私たちがお寺と神社を見比べた際に、最も分かりやすい明確な違いは建築様式です。
お寺は中国大陸から伝来した瓦を使用した荘厳な屋根が特徴であり、全体的な雰囲気に重厚感があり装飾品が多い宮造りの工法で作られています。
また、神社には誰もが目にしたことがある鳥居がありますがお寺には無く、入り口に門や塔が建っており門をくぐることで心を清めた状態でお釈迦様の元へお参りできると考えられています。
お寺や仏教建築の内部にある施設
金堂 | 本尊を安置するお寺の中心となる建物 |
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塔 | 仏塔または仏舎利塔と呼ばれており、一般的に仏舎利を表す宝珠を納めている |
講堂 | 仏教や経典などを講義する場所 |
経蔵 | 書物や経典を納める場所 |
鐘楼 | 時間を知らせる釣鐘 |
食堂 | 僧侶が食事をとる場所 |
僧房 | 僧侶が生活する場所 |
お寺と神社の見た目の違い:神社建築の特徴
お寺と比較し、屋根以外の建物全体を木で建てられている神社建築は木を信仰の現れとして考えています。
木を使用していない神社建築の屋根ですが、土壁や石材を使用せず茅やヒノキを用いることで自然体な雰囲気を表しています。
神社は装飾が少なく簡素な見た目が特徴ですが、入り口には神社のシンボルともなっている鳥居が建てられており、これより先は神々が降臨する神域として人間が住む俗界と区別しているのでしょう。
神社建築の内部にある施設
拝殿 | 礼拝のための施設 |
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本殿 | 神が鎮座しており、最も重要な場所 |
摂社・末社 | 主祭神と関係する神を祀ったり、維持が厳しくなった地域の有力な神社に統合したりと由緒や規模が様々 |
神楽殿・舞殿 | 舞楽を演奏する施設 |
手水舎 | 手を洗い、口をすすいで身を清める場所 |
お寺と神社の違いは何?見た目以外に違いがあるのかをご紹介
お寺と神社の見た目はどのような違いがあるのか?それは仏教建築と神社建築の工法の違いや鳥居の有無、内部の施設や祀られているものを見られるかどうかにありました。
そんなお寺と神社ですが、そのほかにも宗派の違いや祀っているものの違い、お参りの方法など建物の外観だけはでない違いも多く存在します。
では、ここからはお寺と神社での見た目以外の違いに焦点を当てて分かりやすく解説していきます。
- 宗派
- 祀っているもの
- 勤めている人の違い
- お参りの時にすること
お寺と神社の違い①:宗派
お寺と神社はそれぞれ異なる宗教の施設であり、お寺は仏教であるのに対して神社は神道です。
仏教は中国やインドから日本に伝わってきた外来の宗教であり、神道は日本が起源の宗教であり特定の人物だけでなく山や森、神木といった自然も信仰します。
どちらも日本人に馴染み深く、仏教神道のどちらにも参拝したりと双方の宗教どちらも受け入れているのは、日本独自の文化だと言えるでしょう。
お寺と神社の違い②:祀っているもの
お寺と神社では祀っているものが異なっており、お寺は仏像が祀られていることに対して神社は御神体が祀られています。
仏様は釈迦如来や観音菩薩に大日如来など、たくさんの種類がある中でそのお寺で1番大切な仏様とする本尊が存在しているほか、一般的に公開することがない秘仏も存在します。
一方で御神体は神道の神々や先人の祖神、怨霊といった神様が祀られており、お寺と異なり御神体の姿を目にすることができません。
お寺と神社の違い③:勤めている人の違い
お寺では一般的に「お坊さん」と呼ばれている僧侶がお経をあげたり修行を行っており、教えを説く僧侶を「和尚」といい、お寺に住み込んで働く僧侶を「住職」女性の僧侶を「尼」と呼ぶのが一般的です。
神社では「神主」と呼ばれる人が祭事や社務に祈祷などを行っており、その中でも神社の責任者となる人は「宮司」と呼ばれています。
神道には教えがないため説教も行いませんが、代わりに神の言葉を伝える祝詞を唱えています。
お寺と神社の違い④:お参りの時にすること
お寺と神社ではお参りの時にすることにも違いがあることをご存知でしょうか。
現在の幸福または死後の極楽浄土などを願うお寺では、お参りの際に願いを唱えるというよりかは自分の環境や生活を自分の力でより向上させるといった誓いを述べています。
一方、現在の幸福を願う神社ではお参りの際にこれまでの醜い出来事を清め心機一転の決意表明を行い、自分の努力で道を切り開いていく意思を神様に伝えます。
お寺と神社はどっちが先にできた?関係性や由来について詳しく解説
お寺と神社はそれぞれの役割や宗教などから、見た目以外の側面でも多くの違いが存在することがお分かり頂けたと思います。
古くから日本の人々の暮らしに根付いているお寺と神社ですが、それぞれの関係性や誕生にはどのような背景があるのかが気になる方も多いでしょう。
では、ここからはお寺と神社どっちが先にできたのか、関係性や由来について歴史的な考え方を交えながら分かりやすく解説していきます。
もともと日本は神道が根付いた土地だった
先ほども述べたように、仏教は海外から伝来された宗教であるのに対して神道は日本特有の宗教です。
古くは弥生時代頃に神道が日本に広まり、大木や大きな岩など身近に存在する自然に神が宿るという考えが生じ、その周りで宗教的な儀式も行われていました。
神社が建てられた後でも、お正月に初詣に行ったり七五三には子供の健康を祈って神社へお参りに行くなど神道の文化は現在にも残っています。
古墳時代に仏教が伝来したことで「神仏習合」の思想が生まれた
自然界にあるものに神が宿るとされてきた神道が広まっていた日本に、お釈迦様や如来を崇める仏教が古墳時代に伝来しました。
これまで神様を信仰してきた人々が、信仰対象について混乱してしまうことを防ぐために生まれた思想が「神仏習合」です。
その後、神道と仏教を1つに融合した「本地垂迹説」が誕生したことでお寺や神社が建てられるようになった関係から、本来別物であった神様と仏様が同一視されるようになりました。
お寺と神社の違いは明治時代に「神仏分離令」が発令されたことによって明確になった
これまで「神仏習合」を唱えてきた日本ですが、明治時代の新政府は完全否定しており、仏教が伝わる以前の神道中心国家に戻すべきとして「神仏分離令」を発しました。
「神仏分離令」によりお寺と神社は完全に切り離され、お寺と神社を習合して建てられた建設物は廃寺こそ免れたものの、習合状態を解消しなければなりませんでした。
江戸時代頃には日本での仏教は姿を消しかけていましたが、信者との向き合い方や社会活動など試行錯誤を繰り替えした結果、現在も日本仏教として定着しています。
お寺と神社の数はどっちが多い?
現在でも日本人の身近な存在であるお寺と神社は、古くからの歴史や文化が結びついていることが分かりました。
歴史的な価値が垣間見える風景の1つでもある両者ですが、日本全国を見渡して一体どっちが多いのだろう?といった疑問を持つ方は多いと思います。
では、ここからはお寺と神社の数はどちらが多いのか、具体的な数字を交えながら分かりやすく解説していきます。
日本にあるお寺の数は約77,000寺程度
お寺と神社の数はどちらが多いのか?も気になるところですが、結論から言うと神社の数の方が多いです。
お寺の数は約77,000寺あるとされており、最も多い都道府県は愛知県です。
愛知県に神社が多いとして考えられる理由は、愛知県は織田信長や豊臣秀吉といった戦国武将が多く天下統一をかけて戦を行っていた舞台であるため、戦で敗れた兵士を弔うために多くのお寺が建てられたとされています。
日本にある神社の数は約81,000社程度
一方、日本にある神社の数は約81,000社あるとされており、お寺よりも10,000社ほど多いです。
中でも神社が最も多い都道府県は新潟県となっていますが、少し意外と思われた方も多いのではないでしょうか。
新潟県ではかつて米作りが現在よりも盛んで経済が非常に潤っていたという背景があり、また船の船舶地でもあったため新潟県は人口が多く、人口増加の関係から自然と神社の数も増えていったと考えられています。
日本にある神社の中には法人格のないものも存在している
日本国内の神社などは宗教法人法に基づき法人格を与えられていますが、中には法人格がない神社も存在します。
一般的に神社は法人格を持つことで法律上の主体として認められ、土地や財産を取得して奉納物を受け取ることができますが、一部では法人格を持たないものも存在しており個人で土地や財産を管理しています。
法人格を持たずに存在することは可能ですが奉納物を受け取ることができないので、資金調達や維持に必要なものは他の法人で管理して貰う必要があるでしょう。
お寺や神社に行くのはどんな時?行く理由をご紹介
心の癒しや精神的な統一ができるとされるお寺や神社へ、お祭りやイベント事の際に立ち寄ったことがあるといった方も多いでしょう。
中にはお寺や神社はどんな時に行くべきか、お参りに行く理由はどういったことが挙げられるのか?そんな疑問を持つ方は多いと思います。
ここではお寺や神社に行く際の最適な状況やお寺の役割について焦点を当て、人々には欠かせない行事に基づいて分かりやすく解説していきます。
- 葬儀・法事がある時
- 結婚式
- 初詣などの行事
お寺や神社に行く理由①:葬儀・法事がある時
一般的に葬儀は神社では行わずにお寺で行うとされており、その背景として仏教と神道の違いが挙げられます。
神道が唱えられている神社は死を穢れだと考えられており、穢れを神社に持ち込むことを禁止としている理由から神社での葬式を行っていません。
一方で仏教では亡くなった人間は一度自然に還り、再び地・水・火・風の4元素が集まり肉体を作り出すと考えられているので、お寺では死者を恐れずに供養を行っています。
お寺や神社に行く理由②:結婚式
お寺や神社に行く理由の1つとして結婚式を思い浮かべる方も多いと思われますが、お寺で行う「仏前式」と神社で行う「神前式」の2つがあることをご存知の方も多いでしょう。
「仏前式」は仏様と先祖に結婚の報告を行って、結婚すると来世まで連れ添うという仏教の教えに基づき新郎新婦が結びつくことを誓います。
一方「神前式」は神様に結婚の報告を行い、両家の結びつきを強めてこれからのご加護を願うということが大きな意味合いとされています。
お寺や神社に行く理由③:初詣などの行事
昨年までの無事に感謝して、新しい1年も無病息災で過ごせるように神仏に願うのが初詣です。
お寺と神社どちらに行けば良いかで迷う方も居ると思われますが、結論から言うとどちらに行かなければいけないということはありません。
また、神道の考えでは初詣は地域の神様に挨拶すべきとされていましたが特に決まりごとなどはなく、お寺と神社問わずどちらかに参拝すべきといった決まりもないとされています。
コロナ等の影響によりお寺や神社の法事やお参りに行かない人も増えている
日本中に大きな影響を与えた新型コロナウイルスですが、その衝撃はお寺や神社にまで及んでいます。
新型コロナウイルスの拡大により「3密」を避けるべく外に出歩く人々が減少したためお寺や神社に訪れる人も少なくなり、経済的に困窮する寺社も増えているそうです。
お参りだけでなく法事やイベント、お祭りなどの行事の開催も自粛している関係で、更なる寺社収入が減少する可能性もあります。
お寺と神社の違いは見た目以外にある?どっちが先にできたのか関係性やどっちが多いのかまとめ
今回はお寺と神社の違いや関係性についての疑問にお答えするため、両者の見た目だけでなく宗派や祀っているものなど、見た目だけでない違いについても詳しく解説してきました。
お寺は仏教が唱えられているのに対し神社は神道が唱えられていることが大きな違いであり、どちらも日本古来の歴史に深く根付いていることが分かりました。
記事内でご紹介した違いを思い浮かべて頂くことによって、新たな発見が見えてくるかもしれません。